高専という場所

 私の出身中学校では、私以来十年と高専へ進学した者が居なかったという。

 それ故に、高専の入試対策というものや、高専に関しての情報は殆どなく、「まあ、公立高校の入試と被らないから受けるだけ、受けてみよっ!」というノリで受験して、なんとか受かったわけである。 

 その魅力とはどこにあったか。

 私は「化学科」に進んだので、確か白衣が猛烈に羽織りたいお年頃だったとか、中学時代は学ランだったので私服登校というというものに憧れがあっただとか、大の苦手の文系科目を勉強しなくてもよいだとか、就職率が非常に高いなどと、そんなものだったと思う。あと、センター試験の荒波に飛び込む必要がないだとか……。

 入試当日は緊張しすぎて、作文でしたがき用紙に清書書きしたのを鮮明に覚えている。「……そっか、最近の作文はマス目がないんだなあ……」とか本気で思って、マス目のある方を下書きとして使ってしまいました。いや、ほんと良く合格したなあと……。

 私は偏屈なので、授業中の態度が本当に悪い。中学時代にはそのせいで関心意欲態度に最低評価がついたのは、いい思い出である。その点、高専実力主義というか、テストでちゃんと良い点だけを取って入れば良いので楽であった。

 そして、入って一か月で私服登校が面倒になった。元来私は服装に頓着がなかったので、「ワイシャツ、チノパン、ベスト、革靴」という「え? 先生のコスプレ?」などと揶揄されるぐらいにはフォーマルっぽい服を着まわしている。まあ、屁理屈を言わせてもらえば、周りにはおしゃれな人や、ポップな人や、地味な服装の人が居る中で、こう自分だけきちっとしているのは、冬場にホットパンツを穿く女子ぐらいインパクトがあると自負している。

 そしてやはり専門の授業というのが、頗る面白い。私は二年の時に「分析化学」という運命の科目に出会った。もう、本当に楽しくて、これをやっているときはいつでもにこにこしていた覚えがある。普通高の学生はこいつに出会えないんだろうなあと思うとそれだけで嬉しくなった。

 また、高校生で遊んでんなアという人は、よく「大学生の人とこれからデート」だとか言うのかもしれないが、高専では、要は四五年生というのが、大学一二年に当たるわけで、放課後よろしくやっている人も多い。

 私は上の学年とも下の学年とも関りが薄いので、どこか僻みながらも、まあ、同級生と遊んでいるので十二分に楽しいよね、と割り切っている。

 

 今回はここまで。

 次回は、『寮という存在について』だ。

 ありがとうございます。